間接的に人を殺す詐欺師

建設業を営んでいるAさんは60代、子供たちは結婚してそれぞれの家庭を持ち、妻と2人で暮らしていました。

そんなAさんのもとに、以前、リフォームの仕事を請け負ったことがある不動産屋の関係者、ワタナベと名乗る男から連絡が入りました。ワタナベはAさんと同じく60代。

「実は、空きアパートがあるんだ。これを買い取って改築すれば、結構な家賃収入になる。700万円だから買い取らないか?」

建築業だけでは安心して生活できないと思っていたAさんは、ワタナベの口車に乗ってアパートを買い取る約束をして、即金で700万円を支払いました。ところが、ワタナベに教えられたアパートを実際に見てみると、改築などというレベルではなく取り壊して新築しないと入居者なんて集まらないようなボロアパート。しかも、空きではなく何人かの住人が住んでいました。

「どうなってるんだ!」とワタナベに詰め寄りますが、ワタナベからは「あぁ、立ち退きを要求すればいい。」と軽い返事。700万円の支払いに対してワタナベから渡されたのは『領収書』ではなく『出資金預り証』となっており、名目はワタナベの事業に出資したことになっていました。

Aさんが登記を調べると、ワタナベには何ら権限がない個人所有のアパートだと判明しました。Aさんは弁護士に依頼し、警察に告訴しましたが、ワタナベの逮捕を待たずに病死しました。

夏の暑い日、仕事から帰って風呂に入り、入浴中に脳卒中で倒れたのでした。Aさんの奥さんから聞いた話では、死の前日、Aさんが寝言で「よくも騙したな!」と叫んだそうです。よほど口惜しかったのでしょう。

警察の捜査で、ワタナベは同じ手口を使って他にも3件もの詐欺を働いていた生粋の詐欺師だと分かりました。過去の被害者は、3人ともワタナベに騙されて会社の支払いや生活に窮してしまい、全員が自殺していることも判明しました。

そのうちの1人は、ワタナベが名乗ったAさんとの繋がりがあった不動産屋の社長。その社長は、ガソリンを被って焼身自殺したそうです。

ワタナベは、詐欺で4人もの被害者を殺しました。直接ではないにしろ、ワタナベの詐欺に引っかからなければ、誰も死なずに済んだはずなのです。間接的に人を殺す詐欺師、こんなに非道な詐欺師は見たことも聞いたこともありません。

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